特別対談記事を二回に渡り公開!「ザ・ミュージカルチャー」秘話が満載!
後編では、“ザ・ミュージカルチャー”の世界観、そして舞台に込められたメッセージを語っていただきました。
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舞台版マクロスでは世紀末的なカオスを表現したいと思っています。
―― 今回はアニメ上にはない、「マクロス29(ツーナイン)船団」という新しい舞台設定ですが、どういったイメージで作られていますか?
茅野:(ツーナイン船団というのは)僕が考えた設定ではないのですが……武力を放棄していて、疲弊しきっている貧乏船団で……そのプロットを聞いたときは意図するところをうまく掴めませんでした。武力をもたないとか貧乏とか、およそSFものとかけ離れたイメージじゃないですか。でも台本を作っていく過程でその面白さを実感することができました。舞台版マクロスでは、みんなが抱いている未来像みたいなものを思い切って裏切ってみようと思っています。具体的なことは観てのお楽しみなんですが、全体を通してノスタルジックな世界観にしてみたいと思っています。船にお金がないから新しいものを取り入れられない。だから舞台装置では、真空管がボワーンと発光していたり、金属も古い素材で、錫や真鍮の質感を使ったりと、ちょっと時代を逆行した印象を付けようかなと。マクロス船団って、人工物だけど自然環境もあって、ユートピアのような部分もあるじゃないですか。温室に守られているというか。でも舞台版マクロスでは世紀末的なカオスを表現したいと思っています。
河森:いいですね!面白いと思います。設定がグッと膨らみそうですね。(キャラクターの)台詞の説得力も更に増すんじゃないでしょうか。
何もかもが格好良い未来ではなく、格好悪い子達が輝く瞬間
―― 河森監督から、ミュージカルで実現してほしいことなどはありますか?
河森:薄皮一枚の世界というか……物理的にもそうですし、心の上でも『その一枚があるから触れられない気持ち』や、『そこを破っていく思い』を感じられたらいいなと思っています。膜が震えている感覚というか。それが肉体表現の中で見られたら良いなと思います。何もかもが格好良い未来ではなく、格好悪い子達が輝く瞬間というか。そういったものを生身だからこそ出来る、力強い表現で見たいですね。手書きアニメーションの場合、大分改善はされてきたんですけど、特に体温や、汚れをフィジカルな痛みとして表現するのが凄く難しかったりしますから。
茅野:なるほど。生身の表現、そこは僕らがやらなきゃいけないことですね。
河森:期待したいところですね(笑)。
茅野:期待に応えたいところです(笑)。