『僕らは僕らの新しいマクロスを作った』と言えるようにしたい
――最後に、今回はアニメシリーズを見ていたファンの方、ミュージカルで初めてマクロスを見られる方が同じ場で見ることになると思いますが、今回の舞台の見所をお二方からいただけますでしょうか。
茅野:やっぱり怖いのは……例えば僕がマクロスの昔からのファンだったら『実写化すんなよ!』っていう気持ちは絶対にあると思うんです。期待感の他にも、今までのマクロスを壊さないでくれっていう思いを持っている方は、当然、いっぱいいるだろうなと。でもだからこそ、そこは胸を張って『僕らは僕らの新しいマクロスを作った』と言えるようにしたいと思っています。プレッシャーは物凄く大きいのですが、そこは絶対に乗り越えたいですね。見に来られなかった方にも噂が届くように、ちゃんとしたいなと。マクロスの世界観の中には、普段の自分の発想力じゃ思いつかないようなことがたくさんあって、それを具現化するためには僕自身が新しい表現方法を獲得しなければならない。でもそこが演出家として凄く楽しくて、幸せなところです。みなさんからボクにかけられている期待は『新しいミュージカルを作る』ということだと思っています。もちろんそれはボクの目指すところでもあります。「こんなミュージカル初めて観た!」って言ってもらえる舞台を作りたいです。まだ稽古に入ったばかりなので大きなことは言えませんが、理屈抜きで超ゴキゲンなミュージカルにしたいと思っています。ただ、稽古場での作業は手探りでコツコツやってくしかなくて。ある瞬間を突き抜けると違うんですけど、舞台というのは一気に良くはならないので、牛歩のようにちょっとずつ、ちょっとずつ作っていければと思います。僕は演出家ですから舞台全体のグランドデザインは描けるけど、細部は演じる役者さんにかかっています。結局は演じる人間一人一人が大事ですから。稽古を重ねていく中でそのうち、役者さんの方が自身の役のスペシャリストになっていくと思うので、その瞬間が訪れて、役者さんが僕を逆転して、全員が僕の想像力を追い抜いてくれると、とてつもなく良い舞台になるんじゃないかと。稽古中はそこを目指していきたいと思います。こんなに素晴らしい作品と出会えたことは、本当に幸せなことだと感謝しています。ひとりでも多くのお客さんに愛されて、また観たい!と思っていただける作品をキャスト・スタッフ一丸となって作って行きたいと思います。